【新作動画】さようなら炭坑電車


【大正6年製】さようなら炭鉱電車 大牟田貨物 三井化学専用線 2020年5月廃止

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今回は2020年5月7日に廃止となった福岡県大牟田市にある三井化学専用線、炭坑電車です。

三井化学専用線は、鹿児島本線大牟田駅の北にある仮屋川操車場と宮浦駅を結び、黒崎駅からの硝酸、南延岡駅からの液体塩素を輸送していました。しかし、硝酸の製造元であった三菱ケミカルが製品の製造を中止し、硝酸の入手方法が変更となった為、鉄道輸送が終了。同時に炭坑電車の役目も終わりを迎えることになりました。

 

〔炭坑電車と三井化学専用線

日本有数の採掘地であった熊本県荒尾市にと三池炭鉱いう採掘場がありました。採掘された石炭を輸送する為、建設された鉄道が『三池鉄道』です。

全盛期には150kmにおよび、地元では「炭坑電車」と呼ばれ親しまれていました。しかし時代は進み、平成9年にはエネルギー革命により石炭需要が低下、採掘作業も終了することになり、あわせて三池鉄道も廃止となります。

しかしながら、宮浦駅〜旭町駅の旭町支線1.8kmについては、三井化学に譲渡され、材料搬入用の専用線として生き残ることになりました。これが宮浦駅〜仮屋川操車場の三井化学専用線です。

この専用線は、路線だけでなく、使用されている機関車も三井鉄道時代からのものでした。本線で使用する45t機18号機、19号機、入換用の20t機の9号機、11号機、12号機の5両です。

18号機、19号機は、昭和11年製の凸型デキ。かつて全国の地方私鉄などに導入された戦前型東芝製のデキで、伊豆箱根鉄道にも同型機が2両存在していますが、これらは車両輸送用で、定期的に運行されているものではなく、毎日定期的に運行されていることは非常に貴重な存在でした。

20t機については、歴史はさらに遡ります。9号機は大正4年、11号機、12号機は大正6年の製造で、三井鉄道が明治42年に電化された後、輸入されたドイツシーメンス社製の20t機1号機の製造を模倣、コピーしたものを国内で製造して出来たものでした。

これら車両は、明治44年に導入された1号機同様のデザインをしており、電気機関車聡明期の姿を現代に伝えるシンボル的存在だったように思われます。

仮屋川操車場から宮浦駅までの1.8kmの区間にも、昔の鉄道風景が残っていました。

100年以上の歴史を持ち、日本の近代化を支え続けてきた鉄道と、明治から戦前にかけて製造された旧型電気機関車が、かつての鉄道風景の中を走る、令和の時代に残された”奇跡の鉄道”それが、三井化学専用線の炭坑電車なのです。

今回の廃止を受け、三井化学株式会社ではイベントも検討されているようです。

 

今回の撮影の際に訪れた「万田坑

現在の事態が収束し、自由に行き来が出来るようになった際には是非行ってほしい!

とおススメしたい場所です

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万田坑は日本最大規模の2つの竪坑を持つ、三池炭鉱の中心的存在でした。

ヨーロッパやアメリカ製の機械を取り入れ、当時としては最新鋭の技術を集結させています。1900年代前半に採炭は最盛期を迎え、日本の産業振興を支え続けてきましたが、後半になると採炭効率も低下。採炭は1951年に終了し、1997年に閉山しました。

その後、2015年7月、荒尾市大牟田市に数多く残る他の近代産業遺産ともに、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」として世界遺産へ登録されています。

 

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第二竪坑坑口
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第二竪坑巻揚機室
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見学の際に被るヘルメットには万田坑のデザインが施されています

 

もう一つの炭鉱遺構近くで、まさか⁉のものが

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万田坑のある熊本県荒尾市に隣接する福岡県大牟田市にも、「宮原抗」という三池炭鉱最盛時を支えた竪坑が残されています。

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この宮原抗の近くに、なんと三池炭鉱専用鉄道で活躍した電気機関車?がありました

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ドイツ・シーメンス社製 1号電気機関車 を再現したトイレです

f:id:Kumagorou_tetsudo:20200609142841j:plainちなみに機関車の上についているパンタグラフ103系1509番電車に設置されていたものだそうで、筑肥線西唐津姪浜・天神方面を結んで運行されていました。

 

 

 

宮原坑跡の東側には三池炭鉱専用鉄道敷跡も残っており、当時の様子を垣間見ることが出来ます

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三池炭鉱遺産 万田坑と宮原坑 高木尚雄/著 出版社名 弦書房